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もっと知りたい!免疫と納豆菌の関係 S-903 納豆菌コラム

3月(march)Vol.12 「新生活応援! 発酵食品を摂りいれて新しいチャレンジを」

新しい生活を楽しもう!


進学や就職、転勤など新生活を迎える季節になりました。心機一転、新しいことへのチャレンジをはじめたいと考えている方も多いのではないでしょうか。春先は少しずつ暖かさを感じるようになってくる一方で、季節の変わり目にあたり体調を崩しがちです。ぜひ、体調を整えて新年度を迎え、新しい毎日を楽しんでいただけたらと思います。

これまでのコラムでも何度かお話ししたとおり、私たちの健康はからだの「免疫機能」が適切に働くことで維持されています。免疫細胞はからだ全体の6~7割が小腸に集まっていますので、生活習慣を見直して腸内の環境を整えることは、私たちの免疫機能と健康の維持につながってきます。腸内環境については5月コラム「腸内環境と免疫の関係」で詳しくお話ししていますので、あわせてご覧いただければと思います。

辻典子先生

「腸」と「脳」はつながっている

みなさんは「脳腸相関」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

この字の表すとおり、『脳』と『腸』とが密接にかかわりお互いに影響を及ぼすことをいいます。例えば、私たちがストレスを感じるとお腹が痛くなることがありますが、これは脳が自律神経を通じて、腸にストレスの刺激を伝えているからです。一方で、腸が何かしらの病原菌に感染したりバリア機能がそこなわれたりした場合には、脳で不安感が増すなど、おなかの状態がこころや行動を左右するという報告も増えてきました。最近では、病原菌だけではなく腸内に常在する細菌も脳の機能にさまざまな影響を及ぼす、という研究も進められており、「脳-腸-微生物相関」という言葉も提唱されているようです。

また、心身がリラックスした状態のほうが免疫細胞の動きや働きがよくなることもわかってきていますので、呼吸を整える、からだを温める、笑顔で過ごす時間を増やしていくなど、日ごろから免疫機能を意識した生活習慣を心がけてみるのも、緊張などによるストレスが増えるこの季節には特によいのではないでしょうか。

「発酵食品」である納豆は、新生活スタートの強い味方


食事シーン

からだの中心にあり、脳など各臓器の機能とも密接につながっている「腸」ですが、その大切な「腸内環境」を整え免疫機能を高める作用が期待される代表的な食べ物として「発酵食品」があります。「発酵食品」とは、微生物の力を借りることで元の食材にはない豊かな風味が生み出され、私たちの身体に有用な成分が高まった食品です。みなさんの身近にもいくつもの発酵食品があるのではないでしょうか。例えば、麹菌・酵母・乳酸菌から生まれる味噌、醤油、みりん、日本酒。乳酸菌から生まれるぬか漬け、そして納豆菌から生まれる納豆などがあります。

中でも納豆は、“プロバイオティクス”(=善玉菌そのもの)である納豆菌が、食物繊維豊富な“プレバイオティクス”(=善玉菌のエサになる)である大豆を発酵させてつくられた食品であることから、両面を兼ね備えた“シンバイオティクス”としての良さをもっています。また、納豆には良質なタンパク質、ビタミンB群、カリウムなどが豊富に含まれています。ビタミンB₁などのビタミンB群は代謝や免疫機能を助ける働きがありますし、タンパク質は消化の際に体内で熱を産生し、内側から体をあたためて免疫力を高める働きも期待できます。

最近ではさらに、免疫に対する機能性が一般的な納豆菌より高い納豆菌の研究も進んでいるようです。発酵食品である納豆は理想的な腸内環境作りを促す効果にも期待がもてますから、新生活をはじめるみなさんの強い味方と言えるかもしれません。

辻典子 先生
辻 典子先生
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門
免疫恒常性研究特別チームリーダー・上級主任研究員、農学博士

1995年 東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号取得、同年 米国Yale大学School of Medicine博士研究員、1997年 農林水産省家畜衛生試験場 主任研究員、2001年 農業生物資源研究所 主任研究員、2005年 産業技術総合研究所年齢軸生命工学研究センター チームリーダー、2015年より現職

  • 主な研究内容は、腸管免疫・免疫全般(食品による免疫細胞機能の増強、免疫バランスの改善⇒アレルギーなど炎症性疾患の制御、感染症対策など)。
  • 研究成果を基に、株式会社腸管免疫研究所の基盤技術と創業アイディアを産み、科学アドバイザーを務める

※肩書は取材当時のものです